研究概要

内容の一部は、京都大学丸の内セミナー(2019/12/6)の公開動画で山村先生により解説されています。
URL:https://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/opencourse/152/videos/20191206

原子炉発電所の燃料として用いられるウランは、それが燃焼して生じる燃料のプルトニウムや、放射性廃棄物と考えられるネプツニウム、アメリシウム、キュリウムなどとともに、周期表では「アクチノイド」という系列にあります。皆様は、周期表の下に離れて、希土類とアクチノイドの系列が表示されていることで思い出される方もいるかもしれません。プルトニウムから後の元素は、人類が発見して80年に満たないため、様々な興味深い性質が眠っていて、今もその研究がされています。

アクチノイドの系列元素は15個ありますが、全てが放射性です。他方、磁石やレーザーに大活躍の希土類と負けず劣らず、変わった電子的性質があります。私たちは、このようなアクチノイドの興味深い物質を作ったり、調べたりすることで、利用していきたいと考えています。

具体的には、アクチノイドを含む色々な錯体を合成し(A)、その性質を研究します(B)。このような研究は、例えば、アクチノイドの崩壊系列を利用する(C)ことにより、核医薬の研究に向けていくことができます(D)。最も有望なアクチノイド核種はAc-225で、山村は東北大時代に製造して供給していました。この成功例は2016年にドイツの病院で末期の転移性ガン患者がAc-225核医薬の投与で完治したことです(E)。

私たちはウランの様々な酸化状態を作り、また反応させることができます。高温や高圧の条件での反応も可能ですが、逆にどれだけマイルドな条件で反応を進めさせられるかに関心があります。私たちが開発した方法に、非常にマイルドな条件(水の沸点以下)で粒径等を制御しながらUO2を合成する方法があります(F)。

上述のように、放射性廃棄物と考えられている元素群(マイナーアクチノイド、MAなどと呼ばれます)は、そのまま使用済み燃料の中に含めておくと10万年、もし再処理を行って高レベル放射性廃棄物としてコンパクトに管理しようとしても1万年は管理が必要です。そこで核変換などの方法により寿命を短くできるかが世界中で研究されていますが、技術的課題の解決には時間を要しそうです。そこで、私たちは、(F)の方法をマイナーアクチノイドの処理に応用し(G)、核変換の方法が解決するまでの間は保管しておける方法の研究開発を進めています。

この全体を通じて、プローブ(放射光・NMR・中性子)を利用した物性研究(B)や、調べられた性質があり得るのかを計算により検討する(H)ことを通じて行います。


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