高エネルギー効率の電池に向けて
バナジウムはウランと非常によく似た性質を持ち、鉱物としても同一箇所で産出することがあります。化学的にも、ウランと同様に4つの酸化状態を持ち、V2+/V3+は等構造で、VO2+/VO2+もほぼ等構造と言えます。等構造の酸化還元対は高速な反応を示します。
私たちは、ウラン電池において高いエネルギー効率を追求した14年間の研究成果に基づき、高エネルギー効率かつ高いエネルギー密度のバナジウム半固体電池が可能であることを見出し、この研究を進めています。
電極反応速度で決まる
エネルギー効率
理想的なレドックフロー電池(RFB)を考えます。電池の充放電で同じ電気量を放電できたとし、電極面積、活物質濃度は同じとします(クーロン効率が100%)。電池の活物質に固有の電極反応速度定数(k0)があり、k0が小さい場合には同じ電流を流すためにインセンティブ(電極反応過電圧)が必要となり、充電、放電の両方を合わせて、このインセンティブ分(電流と電圧を掛け合わせたエネルギー)がエネルギー損失となります。ネプツニウムの電極反応のk0は大きいため、ネプツニウムRFBのエネルギー効率は非常に高いことがわかります。[1]
[1] T. Yamamura, et al., J. Electrochem. Soc.,152(2005) A830.
ウラン電池、ネプツニウム電池の実証
実際に、ネプツニウム電池を製作し、バナジウム電池よりエネルギー効率が高いことが示されています[2]。また、ウラン電池についても動作を確認しています[3] 。
[2] T. Yamamura, et al., J. Alloys Compds., 408-412 (2006) 1260.
[3] 山村朝雄, et al., 放射化学ニュース, 24 (2011)61.
理想的な充放電特性の
バナジウム半固体電池
私たちが開発したバナジウム半固体電池は、化学電池史上最高の充放電電流を誇り、安価、長寿命であることから、再生可能エネルギーの導入に向けた蓄電池に適しています。東北大学金属材料研究所の加藤秀実教授、(株)MKPlusとの共同研究で実用化に向けた研究開発を進めています。
8000サイクル時点で99.7%の電流効率を示します。左図には容量1Ahの角型セルの理想的な充放電曲線を示します。定電流モード(1、2、5、10A)と電流・電圧モード(10C-CV10分間)を含む合計100サイクルを示しています。
高速充放電で顕著な
発熱のない安全な電池
電池の充放電の高速さは、電池容量に対する1時間率(単位C「シー」)で示されます。
左図は電池(容量20mAh)で、1時間率250C(5A)の大電流で20秒充電と、その後50C(1A)での放電の電流・電圧曲線です。この電池は顕著な発熱を起こしません。なお、リチウムイオン電池では高速充放電は難しく、一般的には0.2C、特殊な電池でも1Cどまりです。